坂井寿如・日本アイスホッケー連盟強化本部長インタビュー
2004年11月のトリノ五輪最終予選敗退から2年が過ぎ、2010年バンクーバー五輪出場の期待を背負うまでに成長した日本代表チーム。 坂井寿如・日本アイスホッケー連盟強化本部長が、これまでの取り組みと今後の強化プランを語る。 |
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2004年11月、ロシア・ポドリスクで開催されたトリノ五輪最終予選。
1位のチームのみに与えられる五輪の出場権をめぐり、日本、ロシア、チェコの3カ国は総当たりリーグ戦を行った。 日本は、まずチェコと対戦。先取点を許したものの逆転に成功し、4対1でこれを下す。
一方、ロシアも3対0でチェコを破っていたため、五輪への切符は日本とロシア、どちらか勝利した国が手にすることになる。
総得点でロシアを上回っていた日本は、同点でも出場権獲得が可能だった。ところが、ロシアに2対3で敗北。得失点差わずか「1」でトリノへの道を失った。
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坂井 トリノ五輪最終予選は、準備期間が短かった。大会は11月なのに、強化本部長として携わったのは7、8月ごろでしたから、チーム作りというより、手伝い程度で終わってしまいました。しかし、それでも反省点はいろいろありました。大きな点は、国際試合が足りなかったということ。十分な準備が不足していたというより、圧倒的に試合数が足りないと感じたのです。
ですから、今季(06〜07シーズン)は4Nations Cup(06年10月、北海道・苫小牧市)やエアカナダカップ(07年1月、ドイツ)、冬季アジア大会(同1月末〜2月、中国)と国際試合も数をこなしていますし、例年以上にチームとして活動する期間が長く取れました。トリノの最終予選の反省に対するリアクションとして、いいプログラムが組めたと思います。
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4Nations Cupは、世界ランキングで格上の中国、カザフスタンを破っての準優勝(決勝でドイツと対戦)。その後のエアカナダカップは参加6カ国中5位という順位。しかし、世界ランキング5位のドイツとオーバータイムの末、1-2の惜敗だった。冬季アジア大会はカザフスタンに1点差で敗れたものの、銀メダルという成績を収めた。
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坂井 トリノの最終予選も含め、国際試合を重ねるうちに「勝ち切れない」ということが課題として浮き彫りになってきました。1試合目はいいゲームができるのですが、それが2試合目、3試合目になると続かないのです。もっと厳しく言えば、1試合のなかでも40分はいい。だけど60分、毎試合いいゲームができるわけではないということです。
日本女子代表チームは、どの国と対戦しても、いい勝負ができるベースを持っています。では、何が足りないのかというと、いつもベストの自分を出して、試合をやり抜くだけの基礎体力です。これがないと、非常に波のあるチームになってしまいます。また、日本のどのチームにも共通することですが、決定的な得点力にも乏しい。基礎体力がないため一番大事なところでエネルギーが残っておらず、適当なプレーをしてしまうからです。
けれど、試合内容は非常に良くなっています。エアカナダカップはドイツに1点差で負けてしまいましたが、3000人の超満員の現地のファンがいる会場で、最後まで勝つチャンスを持ちながら好ゲームができました。冬季アジア大会でも大観衆のなかで中国チームと戦い、これまでの試合でもベストに近い内容で勝てました。女子選手は非常にまじめで、このシステムをやっていこう、こういう守りをしようとなれば一生懸命やりますし、吸収力もあります。
今後やらなくてはならないポイントは明確です。ベースとなる基礎体力のアップと、基本スキルの向上なのです。
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日本アイスホッケー連盟が「NIC」(日本アイスホッケーコーチ/www.nicoach.jp)で掲げている日本のアイスホッケーのビジョンがある。そのビジョンとは、コーチレベルを上げる、世界で活躍する選手を輩出する、世界選手権トップディビジョン定着、オリンピック出場・メダル獲得、の4つである。
しかし、このビジョンは基本的に男子代表チームをイメージしたプランだと坂井氏は説明する。女子代表チームと何が違い、どう強化していくのだろうか。
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坂井 男子代表チームと女子代表チームは、彼らを取り囲む環境が違うと考えています。
男子選手は、高校、大学、アジアリーグとアイスホッケーに打ち込める環境が整っていますが、女子選手は仕事の合間にクラブチームとして集まって、練習をして試合に行き、試合が終われば解散です。
ですから合宿をする機会はほとんどなく、女子代表チームの場合は時間を作って召集したりしないと、集中して練習ができない。集中すればレベルも上がりますが、解散した後なかなか集まることができないと、また1からやり直すことになってしまいます。チーム作りの面でも時間がかかります。
08年11月のバンクーバー五輪最終予選まで18カ月ありますが、やるべきことの1つは先ほど述べた基礎体力アップと基本スキルの向上。もう1つが国際試合への参加。あえて挑戦しなくてはならないような試合を、最終予選までに少しでも多くこなし、結果を出す。最終的には代表になる選手たちの仕事や練習の環境についても、前に前に積み重ねていけるものを作らないといけないと思っています。
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世界女子アイスホッケー選手権が、いよいよ日光で始まる。本選手権で優勝しトップディビジョンに昇格すれば、バンクーバー五輪出場権獲得の可能性が高まる。
日本の女子アイスホッケーにとって、今回の世界選手権が意味するものとは。
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坂井 今回は1週間で5試合を戦うこと、日本開催であることのプレッシャーもありますが、われわれは勝つためにやっていますし、勝つ準備もしてきました。この5試合は、バンクーバー五輪でプレーするためのステップの1つだと思っていますので、どのくらいのパフォーマンスができるのか、何が良くて何が悪いのか、われわれはこれから18カ月間何をやればいいのかということを明確にしていきたいと考えています。
私がトリノ五輪を見て痛感したことは、五輪は出るだけではダメだということです。 五輪に参加するということは、責任が伴うことです。 参加して全敗で戻ってきたとなれば、応援してくれた方たちは「なんだ」と思うことでしょう。
トップディビジョンの上位4カ国(カナダ、アメリカ、スウェーデン、フィンランド)との間には厚い壁がありますが、女子代表チームがいい勝負をしてきたドイツが5位です。
それを破るにはどうしたらいいのかというところまで視野に入れてやっていきたい。参加することも1つのステップですが、代表選手には参加して何ができるのかというところまで要求したい。
その結果が優勝であれば、われわれも嬉しいし、日光、そして日本の方々にも喜んでいただけると思います。
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■今シーズンの成績
・4Nations Cup(苫小牧)
予選リーグ:日本3-2中国、日本3-2カザフスタン、日本2-3ドイツ
優勝決定戦:ドイツ(予選1位)3-0日本(予選2位)
・エアカナダカップ(ドイツ)
予選リーグ(Bグループ):日本0-10カナダU22、日本1-2(OT)ドイツ
5位決定戦:日本(Bグループ3位)2-0フィンランドU20(Aグループ3位)
・冬季アジア大会(中国)
日本3-2北朝鮮、日本29-0韓国、日本4-2中国、日本1-2カザフスタン
(3勝1敗:2位) |
<プロフィール>
坂井 寿如(さかい としゆき)
1964年苫小牧市生まれ。コクド(現SEIBUプリンスラビッツ)でFWとしてプレー。
世界選手権14回出場。長野五輪代表。
現在は日本アイスホッケー連盟強化本部長を務め、日本代表チームのGM(ゼネラルマネージャー)として強化に当たる。 |